想いは、聞かないとわからない

今日は営業の話ではなく、私自身の失敗談をひとつ共有させてください。

私が営業マネジャー6年目の頃のこと。事業部長が交代し、さらに副事業部長というポジションが新設され、体制が大きく変わった年でした。

新しい方針のもと、次年度の予算は「部門ごとに策定し、事業部へ説明する」ことが指示されました。それまでの予算は事業部から各部門へ配布される形式でしたから、これは大きな転換点でもありました。

明確なガイドラインはなかったものの、私たちは「部門の成長戦略を描いた予算」を精一杯立案し、部門長を通じて事業部長と副事業部長にプレゼンを行いました。

しかし、その結果は、厳しい指摘とともに否定されるものでした。

「まったく意図と違う」という言葉が胸に刺さりました。

なぜ、方針や意図を最初に共有してくれなかったのか。私は納得できず、つい事業部長にこう問いかけました。

「なぜガイドを示してくれなかったのですか? 私は部門の売上成長を担保できる予算をつくったつもりです」

ですが、返ってきたのは沈黙に近い対応でした。結局、予算は従来通り事業部から配布される形に戻り、私は異動・降格となりました。

理由の説明はありませんでした。

異動先で、私はようやく気づきました。

「なぜ、私は聞かなかったのか?」

新任の事業部長がどんな想いで改革を進めようとしていたのか。副事業部長はどんな問題意識を抱えていたのか。
部門長とは、どこまで深く意思をすり合わせていたのか。

そして、そもそも「なぜ予算を自ら立てるのか」「その予算には誰のどんな想いが込められているべきか」、私はそこまで掘り下げて考えていたのか。

言われたことに対して「精一杯応えたつもり」ではダメだったのです。
聞くべき相手に、聞くべきことを、聞けていなかったのです。

そして、もう一度チャンスをもらったとき

異動先の部門で、4年後に「中期経営計画を自ら立てよ」との指示がありました。
私はまず、部門長の話を何度も聞きました。繰り返し、想いや考えの背景に耳を傾けました。 その結果できあがった計画は、事業部長からも「よく現場を見て、組織のことを考えてくれた」と温かいコメントをいただきました。

最後に伝えたいこと

組織には、それぞれの立場に、それぞれの「想い」があります。
けれど、それは聞かないと、見えません。
聞く努力をしないと、届きません。

だからこそ、私は今でもこの言葉を心に刻んでいます。

「想いは、聞かないとわからない」