営業の小技が、関係をつなぐ

営業の世界では、予定通りに商談が発生し、計画通りに受注できる——そんな理想的なシナリオは滅多にありません。
日々の営業活動は、むしろ想定外の連続で、そのなかで信頼関係を少しずつ積み重ねていくことがすべての始まりになります。

だからこそ、お客様との会話の中で“情報を引き出す力”が求められます。
ただ正面から問いただすだけでは、本音はなかなか出てこない。
そんな時、私たち営業が無意識のうちに使っている「小技」が、意外と効くのです。

たとえば、お客様がどこかよそよそしく、こちらの質問にも曖昧にかわすようなとき。
そんなときは、ぐっと営業色を薄めて、こう話すことがあります。

「同じ業種の〇〇社さんでは、営業部門に営業されてるようですよ。御社ではどうされてるんですか?」

他社の事例をさらりと出すことで、お客様も「うちはね…」と、自然に語り始めてくれることがあります。

また、稟議ルートを探るとき。
いきなり「決裁者は誰ですか?」と聞いてしまうと、構えられてしまいます。
でも、

「仮にこのような内容の案件だとすると、総務部長さんとはどのタイミングで合議されるのですか?」

と“仮に”という前置きを入れるだけで、質問のトゲが抜け、会話のハードルがぐっと下がります。

さらに、稟議にかかる時間を知りたいときも、こんな工夫をします。

「なるほど、総務部長、経理部長が1日で回付して…(と、指を折りながら確認)社長決裁なら3日くらいですかね?」

と軽く推測を口にしてみる。すると、

「いやいや、その前に事業会議にかけるんですよ」とか、
「実は事前に部門長たちの根回しが必要で…」といった具合に、思いがけず本音がポロリと出てくるのです。

こうした営業の“ちょっとした工夫”——いわゆる「小技」は、ただのテクニックではありません。
相手との距離を測り、安心感を与え、会話の流れをスムーズにするための、大切な“橋渡し”なのです。

もちろん、小技が生きるには、その前にしっかりとお客様の情報を調べ、関心を持ち、誠実な姿勢を貫くことが前提です。
でもそのうえで、こうした引き出しがあると、営業活動はグッと奥行きが出てきます。

業界や会社によって使われる小技もさまざまでしょう。
あなたの中にも、知らず知らずに磨かれた営業の“技”が眠っているかもしれません。
ぜひ、自分なりの小技を意識してみてはいかがでしょうか。