商談は、いつ決まるのだろうか?
営業として現場にいた頃、ある日、上司にこんな問いを投げかけられました。
「お客様は、いったいどのタイミングで私たちの会社に“お願いしよう”と決めているんだろうな?」
私は答えに詰まりました。
価格?製品力?信頼?もちろん、どれも大切な要素です。けれど上司はこう続けました。
「お客様は、自分の考えが及ばないところに気づかされたとき、
“この会社と付き合いたい”と思うんじゃないか?」
その言葉が、ずっと心に残っています。
つまり、商談が始まる“前”――まだ課題すら明確になっていない“平時”の時こそが、営業にとってもっとも大事な時間なのかもしれません。
お客様の言葉に耳を澄まし、その奥にある「まだ言語化されていない悩み」や「気づいていない課題」を見つけ出す。
そして、そっと寄り添うように情報を届けることで、「ああ、この会社は自分のことをわかってくれている」と感じてもらえる。
そこにこそ、営業の本質的な価値があるのだと思います。
今はCRMやMAなどのITツールも進化し、営業活動は効率化の時代へと進んでいます。
でも、“お客様の気持ち”を感じ取ること、“言葉にならない不安”に気づくこと、
それはどんなテクノロジーにも代えがたい、人間にしかできない営みです。
「商談は、いつ決まるのか?」
それはきっと、お客様が“信じられる人”に出会った瞬間なのです。
