原体験は、心の奥に息づいていた

今日は、私が起業を決意したとき、そして今もなお心に深く残っている「原体験」についてお話ししたいと思います。

私の父は福岡県柳川市の出身です。けれど、彼の人生は柳川で始まったわけではありません。
生まれは、戦前の満州。当時、兄と姉、そして私の父を含む4人兄妹の中の次男として生を受けました。

戦後、日本に引き揚げてからの暮らしは決して楽なものではなかったようです。祖父もなかなか職を得られず、父は柳川で親戚の家に身を寄せながら高校までを過ごしたと聞いています。

そんな中、父に転機が訪れます。中学、高校と続けていたバレーボールが評価され、東京の大学から声がかかったのです。
ですが、進学にはお金がかかる。家計の厳しさから一度は悩んだそうですが、そのとき、大学講師として働いていた15歳年上の兄(私の伯父)、学費を全額支援すると申し出てくれたそうです。
そうして父は東京へ。大学を卒業し、社会人としての人生を歩み始めました。

その後、父はビジネスマンとしていくつもの部署を経験し、38歳のときに自らのアイデアで教育産業分野の新規事業を立ち上げ、創業社長として新しい道を切り拓きました。
当時としては、まだ珍しかったコンテンツビジネス。その先駆けのような取り組みだったと聞いています。

家ではあまり多くを語らなかった父ですが、会社の同僚を家に招いたとき、ふとした瞬間に私たち子どものことをうれしそうに話す姿が、とても印象に残っています。
寡黙な人でしたが、そんな父がふと漏らす言葉の一つひとつが、私の中で今も生きています。

「家族を大切にしろ」
「仲間を大事にしろ」
「チャレンジすることを恐れるな」

どれも、特別に語られた教訓ではなく、日々の中で自然に染み込んだ言葉でした。

私が今、シニアという節目を迎えて新たなチャレンジを選んだのは、きっとそんな父の姿が、どこかで私の背中を押してくれているのだと思います。 人生に遅すぎるスタートなんてない。
父が教えてくれた価値観は、今も私の中で灯り続けています。